放射線から身を守る

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...放射線被ばくの甲状腺への影響予防に

安定ヨウ素剤の予防服用の意義

原子力災害が発生した場合、放射性物質として気体状のクリプトン、キセノンガス等の希ガスとともに、揮発性の放射性ヨウ素が周辺環境に異常に放出される可能性があります。この場合、希ガスは外部被ばく、放射性ヨウ素は内部被ばくにより、人体に影響を与えることが想定されます。人が放射性ヨウ素を吸い込み、身体に取りこむと、放射性ヨウ素は選択的に甲状腺に集積するため、放射線の内部被ばくによる甲状腺がん等を発生させる可能性があります。この内部被ばくに対しては、安定ヨウ素剤を予防的に服用すれば、放射性ヨウ素の甲状腺への集積を防ぐことができるため、甲状腺への放射性被ばくを低減する効果があることが報告されています。ただし、安定ヨウ素剤の服用は、甲状腺以外の臓器への内部被ばくや希ガス等による外部被ばくに対して、放射線の影響を防護する効果は全くありませんのでご留意ください。


安定ヨウ素剤の予防服用以外の防護対策

放出された放射性ヨウ素の吸入を抑制するためには、屋内へ退避し、窓等を閉め気密性に配慮すること、放射性ヨウ素の少ない地域への避難等の防護対策を適切に講じることが最も重要です。また、放出された放射性ヨウ素に汚染された飲食物の摂取による人体への影響については、食物摂取制限が講じられるため、それらの食物を摂取することで身体に取り込まれる放射性ヨウ素による甲状腺の内部被ばくについては、小さいとする考えがあります。


放射線被ばくによる甲状腺への影響

甲状腺への放射線の影響は、外部被ばくによる場合と甲状腺に取り込まれた放射性ヨウ素の内部被ばくによる場合があります。放射線被ばくにより発症する甲状腺疾患は、甲状腺がん、甲状腺機能低下症、小児の甲状腺良性結節等があります。被ばくによる甲状腺がんの発生確率は乳幼児が最も高く、被ばく時の年齢が20歳までは、線量に依存して優位な増加が認められます。被ばく時の年齢が40歳以上では甲状腺がんの生涯リスクは消滅すると言われています。また、放射線被ばくにより誘発される甲状腺がんの大部分は、甲状腺濾胞細胞に由来する乳頭腺がんであり、一般的には悪性度が高くないため、適切な治療が行われれば通常の余命を全うできるとされていますが、甲状腺で分泌するホルモンには全身の代謝をコントロールする重要な働きがありますので、とりわけ低年齢での被ばくは単に「がん」のリスクだけにとどまらない影響が懸念されます。

放射性ヨウ素による内部被ばくの模式図.png

放射性ヨウ素による内部被ばくの模式図


服用対象者

特に新生児、乳幼児や妊婦の服用を優先させます。乳幼児は甲状腺濾胞細胞の分裂が成人に比べて活発であり、放射能によるDNA損傷の影響が危惧され、安定ヨウ素剤予防服用の効果もより大きいとされています。また、胎児の被ばくを低減・阻止目的で、妊婦の場合は年齢に関係なく服用の対象とします。なお、40歳以上の妊婦以外は甲状腺がんのリスクが認められないことから服用対象者から除外されていますが、服用を妨げるものではありません。


服用対象除外者

  • 40歳以上の人。ただし、妊婦は優先して服用すること。
  • ヨウ素摂取により次に挙げる重い副作用が発生する恐れのある人。
  1. ヨウ素過敏症の既往歴のある人
  2. 造影剤過敏症の既往歴のある人
  3. 低補体性血管炎の既往歴のある人または治療中の人
  4. ジューリング疱疹状皮膚炎の既往歴のある人または治療中の人


服用に時期による期待される効果

安定ヨウ素剤の投与時期と効果

安定ヨウ素剤の投与時期 効果
放射性ヨウ素にされされる24時間前 90%以上の抑制効果
放射性ヨウ素を吸収した8時間後 40%の抑制効果
放射性ヨウ素吸収した24時間後 7%の抑制効果

(出典:Health Phys.,78.2000)


安定ヨウ素剤の剤形

安定ヨウ素剤の剤形は主に丸薬と散剤(粉)ですが、一般的に流通し、原発や原子力施設が立地する自治体やその周辺の自治体で備蓄・配布しているのは丸薬(ヨウ化カリウム丸)です。ヨウ化カリウム丸(50㎎)にはヨウ素量として38㎎に相当する要素が含まれています。


安定ヨウ素剤の服用量

下表にしたがって、適切な量を内服投与します。小学1年~6年までは一律に丸薬(ヨウ化カリウム丸)1丸、中学生以上は一律2丸投与するのが実際的です。就学前の幼児は齢で区切り、投与量を調節しますが、ヨウ化カリウム丸1丸を粉状になるまで砕き、下表服用方法欄に示す量を目安にシロップや砂糖水等に混ぜて投与するのが緊急時には実践的です。

※保管しておく場合は開封しないこと。事前に粉砕した場合は、安定性が担保されませんのでご注意ください。

年齢 ヨウ素量

ヨウ化

カリウム量

服用方法
新生児 12.5mg 16.3mg

丸薬1丸を粉状に粉砕したもの

3分の1強を目安に投与します。

生後1か月~3歳未満 25.0mg 32.5mg

丸薬1丸粉状に粉砕したものの

3分の2を目安に投与します。

3~7歳未満 38.5mg 50.0mg

丸薬1丸をそのままか、粉状に粉砕したもの

全部を投与します。

7~13歳未満 38.5mg 50.0mg 丸薬1丸を投与します。
13~40歳未満 76.0mg 100.0mg 丸薬2丸を投与します。
40歳以上 不要
40歳以上の妊婦

76.0mg

100.0mg 丸薬2丸を投与します。


服用回数

服用は原則1回とします。安定ヨウ素剤の効果は24時間持続することが認められていることから、1日1回の投与で十分とされています。2日目にも服用を考慮しなければならない場合は避難を優先させます。 安定ヨウ素剤の予防服用以外の防護策 放出された放射性ヨウ素の吸入を抑制するためには、屋内へ退避し、窓等を締め、気密性に配慮すること、或いは放射性ヨウ素の少ない地域への避難等の防護策を適切に講じることが最も重要です。


安定ヨウ素剤の副作用

ヨウ素を含む製剤の副作用については次のようなものが挙げられますが、単回服用での重大な副作用は極めて稀です。


ヨウ素に対する過敏症

ヨウ素過敏症は、ヨウ素に対する特異体質を有する人に起こるアレルギー反応です。服用直後から数時間後に発症する急性反応で、発熱、関節痛、浮腫、蕁麻疹様皮疹が生じ、重篤になるとショックに陥ることがあります。また、ヨウ素を含む造影剤による造影剤過敏症、その他低補体性血管炎、ジューリング疱疹状皮膚炎があります。


甲状腺機能異常症

甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症では、ヨウ素を含む製剤を長期連用するとそれぞれの症状が悪化する恐れがあります。慢性甲状腺炎を有する人等で、甲状腺機能障害が認められない人がヨウ素剤を含む製剤を長期連用することにより、甲状腺機能亢進症や低下症という甲状腺機能異常症を生じることがあります。 健康な人がヨウ素剤を含む製剤を大量服用又は長期連用すると、一過性の甲状腺過形成や機能低下を生じることがあります。


その他

ヨウ素は結核組織に集まりやすいため、再燃させる恐れがあります。この他、薬疹(ヨウ素にきび)、耳下腺炎(ヨウ素おたふく)、鼻炎等がありますが、いずれも極めて希です。また、嘔吐、下痢の症状が認められることもあります。


家庭での備蓄

もしもの事故に備えて予防のためにご家庭に備えておくこともできますが、ヨウ化カリウム丸は医療用医薬品ですので、一般薬のように購入することはできません。予防のためあらかじめご購入したい方は医師か薬剤師にご相談ください。なお、この場合は健康保険は適用になりませんのでご注意ください。


出典
  • 『緊急被ばく医療研修』、『安定ヨウ素剤取り扱いマニュアル』(公益財団法人原子力安全研究協会)

https://archive.fo/GHd2T

  • 『青森県緊急被ばく医療マニュアル』(平成22年3月修正 青森県健康福祉部医療薬務課)

http://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/iryo/files/22hibaku-iryo_manual.pdf

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